キッズ4「夏と私」終了

2013年7月27日、明大前〈キッド・アイラック・アート・ホール〉にて現代朗読公演「キッズ・イン・ザ・ダーク 〜 夏と私」2公演を開催し、無事に終了した。

午前9時半、羽根木の家に機材運搬組のかっしー、平田くん、菜穂子さんが来てくれる。
「全国タクシー」というアプリを使ってタクシーを呼び(便利だ)、楽器や撮影機材を平田くん、かっしーといっしょに明大前まで運ぶ。

キッド・アイラック・アート・ホールの前には出演者やお手伝いのげろきょの面々がすでに集合していたので、搬入はあっという間に終わる。
会場準備。
といっても、演劇のように装置や大道具はないので、客席を作ったり、楽器や記録用の撮影機材をセッティングするだけ。
ホールにはピアノがないので、私の演奏機材のセッティングが一番手間がかかる仕事だが、これはいつものことだ。

予定どおり、11時から場当たりをかねたリハーサル。
これも順調に進み、12時半には終わってしまう。
その間、ホールの早川くんが照明や音響の調整をひとりで黙々とやってくれていた。
キッド・アイラック・アート・ホールはちょっと小さくて、現代朗読としてはもうすこし広いスペースでやりたいと思うことがあるのだが、早川くんに対する信頼感が大きいためにこのホールを使う安心がある。
なにもいわず黙々とサポートしてくれるが、ほんとうにありがたい。

昼食を近くの〈なか卯〉で。
もどってきて、13時半、開場。
むし暑いなか、お客さんが来てくれる。
今回も例によって集客には苦労したけれど、出演者の知り合いやいつも来てくれる顔なじみの方たちに来てもらえた。
げろきょの知名度がもう少しあれば楽なのかもしれないと思うけれど、我々がやっていることの意味を知ってもらうのは簡単なことではないのかもしれない。
とにかく情報発信しつづけるしかない。

14時、定刻に開演。
演目は中原中也の「夏と私」という短い詩と、私の同名の「夏と私」という音韻を中也の詩にぴったり合わせた詩の2編のみ。
これを手を変え品を変え、繰り返し朗読していく。
それぞれの「ギグ」といっているがひと区切りごとにタイトルがついていて、それをみぞれちゃんがコールして進んでいく方式。

オープニング・ギグにはタイトルはついていないが、「無声音詰め寄り朗読」と呼んでいるもの。
その後「夏と私と中也と水城」「ワルツとチャチャチャ」「水平線と入道雲」「コーチ、水飲んでいいですか?」「オクトパス」「蛍狩り」「椅子取り合戦夏の陣」「夏の夕べのカエルたち」「ナイアガラ」「さざ波」「洞くつ探検」「線香花火」、そしてエンディングという順番でギグが進んでいった。

最後は朗読というより音楽や踊りに近い大盛り上がりで、全員汗だくになって終了。
いつものことだが、初めて見る現代朗読にとまどう人もいるし、またおもしろがってくれる人もいて、いろいろな反応だ。

15時すぎ、1回めが終了。
中休み。
16時半、2回めの開場。
17時、定刻に2回め、開演。
18時すぎ、2回め、終了。
19時には撤収がほぼ終わった。
大変スムーズに進行して助かった。

ふたたびタクシーをアプリで呼んで、機材を羽根木の家に運ぶ。
ほかのみんなは歩いたり、電車の乗ったりして、羽根木の家に移動。
何人かは所要で帰ったが、出演者・スタッフほか20人近くが羽根木の家に来て、打ち上げ。

みんなお腹がすいていたらしく、野々宮が用意していたおかずの皿はすごい勢いで空になっていった。
そしてここでも大盛り上がり。
じつに楽しい、しかもマインドフルな一日で、ずっと幸せを感じていた。

この公演の模様は、近日中に抜粋映像でお送りする予定。
参加できなかった方もお楽しみに。
(主宰・水城ゆう)

最後に、来場いただいた方の感想を、アンケート回答から抜粋して紹介します。

◎最初はビックリしたが、一緒に足をふみたくなった。

◎普通の朗読会と思ったら大間違い。見ていて、聴いていて熱くなる。いつの間にか自分も参加しているような会でした。

◎ステージを見るのは初めてだったのですが、とてもスリリングでエキサイティングな時間を過ごすことができました。最初の少し(正直なところ)混乱しましたが、そのからまった糸がだんだんほぐれたり、からまったり、流れが速まったり、遅くなったり、リズムにどんどんひきこまれました。最後に私の心の中に残ったのは「Destiny」でした。人生って最後どうなるかはわからない。「絶頂で終わる」って運命みたいで、「美」を感じました。

◎同じ詩が表現方法によって様々にきこえ、おもしろかったです。「さざなみ」が印象的でした。母の楽しそうな姿が見れて、充実感が伝わってきました。

◎客席ではなく、舞台の床の上に座って、出演者にまみれながらきいてみたくなりました。声に酔う、椅子取りゲームに巻き込まれて怪我を負う、などただではすまなそうですが。声でまだまだ遊べそうな予感がしますね。アイデア出し楽しそうですね。

◎私たちは関西から転居したばかりです。朗読に小さい時から興味があった孫が、最近、このサークルに入れて頂き、初めて見せて頂きました。私共も朗読が好きで、ラジオ等でよく聞いております。本日の公演が非常に新しい試みでびっくり、興味を持ちました。出演者の躍動感を感じました。今後の発展を祈っております。

◎出演している方が、やっていて楽しそうに見えました。

◎皆さんイキイキされていて、ほんと楽しそうでしたね。仲間に入りたい(笑)。言葉というものがモノを伝える手段を超えて、自分のエネルギーを確かめるひとつのリトマス試験紙になっている。なかなかいいパフォーマンスを見せていただきました。

◎何より出演者(朗読されている)の皆さんが、楽しく充実している様子が伝わってきた事が良かったです。

◎ひとつのテキストがかくも各イメージを持って楽しめるものにもなることを知りました。

◎ひとつの詩からいろいろな可能性が引き出され、とても興味深かったです。

◎とても現代風にアレンジされている朗読だったので、とても新鮮さを感じました。みなさんとても生き生きと表現されていて、楽しそうで、こちらも思わず笑顔になりました。今後もご活躍をお祈りしています。

◎とても楽しく参加させていただきました。2篇の詩が、このように、色々な表情をもって表現される事、又、群読・輪読、の色々なバリエーション。ナイアガラ、さざ波……。そのうち水琴窟のような余韻を楽しむようなものもお願いします。

◎ようやく公演を見ることができてよかったです。ワークショップでやったことを本当にそのままやっているんだ、と改めて感銘を受けました。音というか文字が宙に浮いて迫って来る幹事がしました。また見たいです。

◎初めて見る形の朗読で、皆さんがとても生き生きと楽しそうにやってるので、こちらまで楽しかったです。

◎個性的な一人一人が楽しそうに力強く動いているのを観て、私もたくさんエネルザーをもらいました。どうもありがとうございました。

◎素晴らしかったです。人の声がこんなにも人の心に訴えるものがあるとい事、感じました。どれも皆おもしろく楽しかったです。一番好きだったのは「ワルツとチャチャチャ」です。迫力がありました。心を動かされるものがありました。

キッズ4「夏と私」終了

2013年7月27日、明大前〈キッド・アイラック・アート・ホール〉にて現代朗読公演「キッズ・イン・ザ・ダーク 〜 夏と私」2公演を開催し、無事に終了した。

午前9時半、羽根木の家に機材運搬組のかっしー、平田くん、菜穂子さんが来てくれる。
「全国タクシー」というアプリを使ってタクシーを呼び(便利だ)、楽器や撮影機材を平田くん、かっしーといっしょに明大前まで運ぶ。

キッド・アイラック・アート・ホールの前には出演者やお手伝いのげろきょの面々がすでに集合していたので、搬入はあっという間に終わる。
会場準備。
といっても、演劇のように装置や大道具はないので、客席を作ったり、楽器や記録用の撮影機材をセッティングするだけ。
ホールにはピアノがないので、私の演奏機材のセッティングが一番手間がかかる仕事だが、これはいつものことだ。

予定どおり、11時から場当たりをかねたリハーサル。
これも順調に進み、12時半には終わってしまう。
その間、ホールの早川くんが照明や音響の調整をひとりで黙々とやってくれていた。
キッド・アイラック・アート・ホールはちょっと小さくて、現代朗読としてはもうすこし広いスペースでやりたいと思うことがあるのだが、早川くんに対する信頼感が大きいためにこのホールを使う安心がある。
なにもいわず黙々とサポートしてくれるが、ほんとうにありがたい。

昼食を近くの〈なか卯〉で。
もどってきて、13時半、開場。
むし暑いなか、お客さんが来てくれる。
今回も例によって集客には苦労したけれど、出演者の知り合いやいつも来てくれる顔なじみの方たちに来てもらえた。
げろきょの知名度がもう少しあれば楽なのかもしれないと思うけれど、我々がやっていることの意味を知ってもらうのは簡単なことではないのかもしれない。
とにかく情報発信しつづけるしかない。

14時、定刻に開演。
演目は中原中也の「夏と私」という短い詩と、私の同名の「夏と私」という音韻を中也の詩にぴったり合わせた詩の2編のみ。
これを手を変え品を変え、繰り返し朗読していく。
それぞれの「ギグ」といっているがひと区切りごとにタイトルがついていて、それをみぞれちゃんがコールして進んでいく方式。

オープニング・ギグにはタイトルはついていないが、「無声音詰め寄り朗読」と呼んでいるもの。
その後「夏と私と中也と水城」「ワルツとチャチャチャ」「水平線と入道雲」「コーチ、水飲んでいいですか?」「オクトパス」「蛍狩り」「椅子取り合戦夏の陣」「夏の夕べのカエルたち」「ナイアガラ」「さざ波」「洞くつ探検」「線香花火」、そしてエンディングという順番でギグが進んでいった。

最後は朗読というより音楽や踊りに近い大盛り上がりで、全員汗だくになって終了。
いつものことだが、初めて見る現代朗読にとまどう人もいるし、またおもしろがってくれる人もいて、いろいろな反応だ。

15時すぎ、1回めが終了。
中休み。
16時半、2回めの開場。
17時、定刻に2回め、開演。
18時すぎ、2回め、終了。
19時には撤収がほぼ終わった。
大変スムーズに進行して助かった。

ふたたびタクシーをアプリで呼んで、機材を羽根木の家に運ぶ。
ほかのみんなは歩いたり、電車の乗ったりして、羽根木の家に移動。
何人かは所要で帰ったが、出演者・スタッフほか20人近くが羽根木の家に来て、打ち上げ。

みんなお腹がすいていたらしく、野々宮が用意していたおかずの皿はすごい勢いで空になっていった。
そしてここでも大盛り上がり。
じつに楽しい、しかもマインドフルな一日で、ずっと幸せを感じていた。

この公演の模様は、近日中に抜粋映像でお送りする予定。
参加できなかった方もお楽しみに。
(主宰・水城ゆう)

最後に、来場いただいた方の感想を、アンケート回答から抜粋して紹介します。

◎最初はビックリしたが、一緒に足をふみたくなった。

◎普通の朗読会と思ったら大間違い。見ていて、聴いていて熱くなる。いつの間にか自分も参加しているような会でした。

◎ステージを見るのは初めてだったのですが、とてもスリリングでエキサイティングな時間を過ごすことができました。最初の少し(正直なところ)混乱しましたが、そのからまった糸がだんだんほぐれたり、からまったり、流れが速まったり、遅くなったり、リズムにどんどんひきこまれました。最後に私の心の中に残ったのは「Destiny」でした。人生って最後どうなるかはわからない。「絶頂で終わる」って運命みたいで、「美」を感じました。

◎同じ詩が表現方法によって様々にきこえ、おもしろかったです。「さざなみ」が印象的でした。母の楽しそうな姿が見れて、充実感が伝わってきました。

◎客席ではなく、舞台の床の上に座って、出演者にまみれながらきいてみたくなりました。声に酔う、椅子取りゲームに巻き込まれて怪我を負う、などただではすまなそうですが。声でまだまだ遊べそうな予感がしますね。アイデア出し楽しそうですね。

◎私たちは関西から転居したばかりです。朗読に小さい時から興味があった孫が、最近、このサークルに入れて頂き、初めて見せて頂きました。私共も朗読が好きで、ラジオ等でよく聞いております。本日の公演が非常に新しい試みでびっくり、興味を持ちました。出演者の躍動感を感じました。今後の発展を祈っております。

◎出演している方が、やっていて楽しそうに見えました。

◎皆さんイキイキされていて、ほんと楽しそうでしたね。仲間に入りたい(笑)。言葉というものがモノを伝える手段を超えて、自分のエネルギーを確かめるひとつのリトマス試験紙になっている。なかなかいいパフォーマンスを見せていただきました。

◎何より出演者(朗読されている)の皆さんが、楽しく充実している様子が伝わってきた事が良かったです。

◎ひとつのテキストがかくも各イメージを持って楽しめるものにもなることを知りました。

◎ひとつの詩からいろいろな可能性が引き出され、とても興味深かったです。

◎とても現代風にアレンジされている朗読だったので、とても新鮮さを感じました。みなさんとても生き生きと表現されていて、楽しそうで、こちらも思わず笑顔になりました。今後もご活躍をお祈りしています。

◎とても楽しく参加させていただきました。2篇の詩が、このように、色々な表情をもって表現される事、又、群読・輪読、の色々なバリエーション。ナイアガラ、さざ波……。そのうち水琴窟のような余韻を楽しむようなものもお願いします。

◎ようやく公演を見ることができてよかったです。ワークショップでやったことを本当にそのままやっているんだ、と改めて感銘を受けました。音というか文字が宙に浮いて迫って来る幹事がしました。また見たいです。

◎初めて見る形の朗読で、皆さんがとても生き生きと楽しそうにやってるので、こちらまで楽しかったです。

◎個性的な一人一人が楽しそうに力強く動いているのを観て、私もたくさんエネルザーをもらいました。どうもありがとうございました。

◎素晴らしかったです。人の声がこんなにも人の心に訴えるものがあるとい事、感じました。どれも皆おもしろく楽しかったです。一番好きだったのは「ワルツとチャチャチャ」です。迫力がありました。心を動かされるものがありました。

7月のオーディオブック・リーダー養成講座のお知らせ

オーディオブック制作のアイ文庫では、長く聴き継がれるハイクオリティのオーディオブックの制作と、唯一無二の表現者としての読み手の育成をおこなっています。
日程の都合がつかない方は、個人セッションも受け付けていますので、気軽にお問い合わせください。

主催:アイ文庫
協力:現代朗読協会

★次世代オーディオブック・リーダー養成講座
 声優/ナレーター/朗読者のためのステップアップ講座
 申込みはこちら

【概要】
オーディオブックの読みや収録についてのノウハウとトレーニング法を一日で集中講義します。
その後1〜2か月のトレーニング期間をおいて最終収録実習をおこないます。

【詳細】

(1)集中講座
以下の日程で開催される一日集中講義を受講していただきます。
とても居心地のいい世田谷の築78年の古民家で、一日じっくり学んでいただきます。

◎日時 2013年7月28日(日)10:00〜17:00
◎場所 羽根木の家(世田谷区/京王井の頭線新代田駅からゆっくり歩いて4分)
◎受講料 33,000円

※集中講座の日程が合わない方のために、個人セッションも受けつけています。ご都合のよい日時に個別受講が可能です。ご相談ください。

(2)トレーニング

収録用の作品を選び、(1)の内容の習得と(3)にむけての1〜2か月間のトレーニング期間を設けます。
期間中は、メールによる指導と面談(またはスカイプ、希望者のみ)で習得状況をチェックします。質問等も自由です。
理解度や技術レベルによっては現代朗読協会のワークショップに参加していだくこともあります(参加費免除)。

(3)最終収録実習

 アイ文庫のスタジオにて収録実践をおこないます。
 収録後、数日以内に評価結果をご連絡いたします。
 その結果を受けて、

 A) アイ文庫オーディオブックの本収録へと進む
 B) 現代朗読協会での実習を継続(ゼミ生登録)する
 C) 独立して自主制作

 という選択肢をご自分でえらんでいただきます。

【本講座の特徴】
オーディオブックリーダー(朗読者)は、ナレーターでもアナウンサーでもなく、声優でもない、新しい声のジャンルです。
オーディオブックの朗読にチャレンジしてみたいと思っている人が多いなか、その読みや収録についてのノウハウをしっかりとアドバイスしてくれる場所はそう多くありません。
そんななかで、アイ文庫は、今後も長くネットコンテンツとして流通していくに耐えるクオリティを持ったオーディオブックの制作とリーダーの育成にあたっています。
単なる音読コンテンツではなく、「朗読作品」としてのオーディオブックを読める人を育てることが目的です。

文芸朗読、詩曲集、教科書朗読、英語朗読などで業界随一のクオリティと実績を持つアイ文庫のオーディオブック・ディレクターが指導にあたります。
ただ読むだけではない、情報伝達のみにとどまらない、「表現」の域にまで踏みこんだクオリティの高いオーディオブック収録ができるハイレベルなリーダー(朗読者)の育成をめざします。数多くの実践的なノウハウを盛りこんだプログラムで予定しています。

アイ文庫のツイッターも参考にしてください。

見えますか、私?

(C)2013 by MIZUKI Yuu All rights reserved
Authorized by the author

   見えますか、私?
                            作・水城ゆう

 なにかの物音で目がさめた。
 ぐっすり眠っていたように思う。前の日、思い出せないが、なにか大変なことがあってとても身体が疲れていた。夢も見ないで眠りこんでいた。
 身体は疲れていたけれど、意識ははっきりしていた。なんの物音だったのかと耳をすましていると、また聞こえた。ススーという物がこすれたり移動したりする音、カタンという小さな音。
 横になったまま音がしたほうに目をこらしてみる。暗くてよく見えない。なんだろう、だれかいるのだろうか。でも、そんな気配はない。ひとり暮らしのこの部屋にだれかがはいってきたらすぐにわかるはずだし、たしかにドアはロックしてある。
 ネズミだろうか。だとしたらそれはそれで怖い。私はゴキブリもネズミもクモも嫌い。
 何時ごろだろう。夜明けまでにはまだありそうだ。
 ベッドの横のカーテンを少しあけてみた。街灯の明かりが差しこんできて、部屋のようすがぼんやりとわかった。
 音がしたほうに目をこらす。そちらには衣類を入れた低いたんすがあり、上にはぬいぐるみや写真などの置物が立ててある。
 じっと見ていたが、なにも起こらない。
 もう一度寝直そうと、カーテンを閉めかけたそのとき、視線をはずしかけた目のすみでなにかが動いた。
 たんすの上のフォトフレームのひとつが倒れて伏せた形になっていた。それがすーっとまるでだれかの見えない手がそうしたみたいに持ちあがり、立ったのだ。
 私はあやうく悲鳴をあげかけた。

 その日から不気味なことが次々に起きはじめた。
 机にすわって本を読んでいると、開けてあったカーテンがすーっと動いて閉まった。めくれていたベッドカバーがぺろりと元にもどった。ならんでいる本の順番が勝手にならびかえられた。
 それが起こるのは夜だけではなかった。休日に昼間に部屋にいるときにも、現象が起こった。
 私の頭に浮かんだのは、古い映画のシーンだった。「ポルターガイスト」というタイトルのその映画では、家具やおもちゃが人の手も触れていないのに空中を飛びかう恐ろしい光景が繰りひろげられていた。それは悪霊のしわざなのだった。
 悪霊? そんなものに思いあたることはない。だいたいこれまで何年かこの部屋に住んできて、一度も起こらなかったことだ。それとも、悪魔払いをしてもらったほうがいいのだろうか。それってだれに頼めばいいの?

 いまも私の目の前で不思議なことが起きている。
 机の上に置いたコップが動いている。飲みかけの水が半分はいっている。それが横に動いた。机の端から床に落ちる、と思ったら、すーっと持ちあがった。
 空中を横に移動していく。キッチンのあるほうに浮遊していく。
 コップが流しのなかに着陸し、それからゆっくりと蛇口がひねられて水が出るのを見て、私はついにこらえていた悲鳴をほとばしらせた。

 気を失っていたのかもしれない。どのくらいの時間がたったのか、気がつくと人の声がしていた。
「あの子、本当に不憫《ふびん》。結婚式ももうすぐだったのに。宏彦《ひろひこ》さんには気の毒なことをしました」
 ママの声だった。でも、声のするほうにはだれもいない。空耳《そらみみ》?
「おれもくやしいですけど、運転手も謝罪してるし、誠実な人みたいだから。それよりお母さんこそ体調とか大丈夫ですか?」
 聞いたことのある男の声だった。宏彦さん? だれだっけ? その声はなんだかとても懐かしい感じがする。
「あの子が事故で亡くなってもうすぐ四十九日《しじゅうくにち》ね。でもまだこの部屋にいるような気がするのよ。だから時々こうやってここに来てみるの。あの子のことを感じたくて……」
 ママ、わたし、ここにいるよ。なんでママが見えないの? ママも私のことが見えないの?
 どうしてなの? 事故ってなに? 私、どうなったの?
 ひょっとして、私……死んじゃってるの? だからママのことが見えないの?

 自分が生きているか死んでいるか、どうやったら確かめられるんだろう。
 いまここにいる私、こうやってみなさんに話をしている私。
 生きているの? あなたたちには私が見えているの?
 私にはあなたたちのことが見えていない……

これ以上おもしろいことはもうできないんじゃないか

いよいよキッズ4こと「キッズ・イン・ザ・ダーク ~ 夏と私」の公演日が近づいてきた。
昨日も稽古だった。
今日も稽古だ。
げろきょは人からおどろかれてしまうほど稽古が少ないのだが、それでもある程度はやる。

今回は朗読台本がA4の紙一枚のみで、中原中也の短い詩「夏と私」と私の短い詩「夏と私」の2編を使うだけ。
この2編をくりかえし、さまざまな形で朗読することで、約75分間の公演をおこなう。
と、こう書くと、いったいどういうふうにやるんだろう、と思いませんか?
思いませんか?
観に行きたくなりませんか?

キッズ公演はこれが4回めになるけれど、毎回、こんなおもしろい朗読パフォーマンスはないと自分でも思っている。
朗読という常識を打ち破り、しかし私がかんがえる「本当は朗読はここまでやれるんじゃないか」という基礎概念を作り、身体表現としてのことば使いを育ててきた結果としての公演になっている。
毎回おもしろくて、終わったあとは「これ以上おもしろいことはもうできないんじゃないか」と思うのだが、不思議にその次はさらにおもしろくなっている。

私のアイディアもそうだが、ここには自分に正直で誠実に表現する共感的な表現者が結集していて、そのみんなのアイディアも力になっている。
前回4月におこなった春公演も、これ以上おもしろいものはできないだろう、と思うくらいおもしろくやれたのに、今回のキッズ4はまちがいなくさらにおもしろくなっている。
とんでもないアイディアとパフォーマンスが結実するはずだ。

さまざまな読み方を次々と繰り広げていくわけで、その段取りはたくさんあるのだが、しかし私が一貫してみんなに確認してもらっているのは、「いまここの自分自身の身体」を感じているかどうか、自分の全体性のなかから声や言葉が出てきているかどうか、ということだ。
それができたとき、そこには有機的なひとつの生き物としての群読の迫力と魅力が生まれるだろう。
そして今回の公演ではそれがまちがいなく目撃できるだろうと確信している。

私は朗読者ではないが、音楽家としてみんなとおなじステージに立てる幸せを予感している。
本当に楽しみだ。
興味がある方はぜひお越しください。
詳細とご予約はこちら

現代朗読&即興演奏ライブ「記憶が光速を超えるとき」前半

2013年6月7日、中野のジャズダイニングバー〈スウィート・レイン〉にておこなわれたライブ「記憶が光速を超えるとき」の前半部分を、未編集ですがお送りします。

出演
 野々宮卯妙(現代朗読)
 水城ゆう(即興ピアノ演奏)

作品「記憶が光速を超えるとき」水城ゆう作

同作品を7月14日(日)19:30より、下北沢〈レディ・ジェーン〉でボーカルの酒井俊さんを迎えてふたたび上演します。
スリリングな現代朗読と即興演奏のライブにどうぞお越しください。
詳細はこちら

現代朗読&即興演奏ライブ「記憶が光速を超えるとき」前半

2013年6月7日、中野のジャズダイニングバー〈スウィート・レイン〉にておこなわれたライブ「記憶が光速を超えるとき」の前半部分を、未編集ですがお送りします。

出演
 野々宮卯妙(現代朗読)
 水城ゆう(即興ピアノ演奏)

作品「記憶が光速を超えるとき」水城ゆう作

同作品を7月14日(日)19:30より、下北沢〈レディ・ジェーン〉でボーカルの酒井俊さんを迎えてふたたび上演します。
スリリングな現代朗読と即興演奏のライブにどうぞお越しください。
詳細はこちら

キッズ4公演の稽古がはじまった

昨年8月に初回公演がおこなわれ、その後12月、今年の4月と、4か月おきに開催されてきた「キッズ・イン・ザ・ダーク」。
その4回めとなる「夏の陣」が今月27日に開催される。
場所はこれまでとおなじ明大前の〈キッド・アイラック・アート・ホール〉。
その稽古がはじまっている。

この「キッズ・イン・ザ・ダーク(略してキッズ公演)」は、ライブワークショップの最終発表ライブにゼミ生たちも参加してふくらませた公演として、最初はスタートした。
そのスタイルがなかなかおもしろかったのと、現代朗読というスタイルを表現するのにとてもいい形式だったので、以後これを踏襲することになった。
4回めの今回も、ライブワークショップの最終ライブをふくむ、ゼミ生も参加しての現代朗読公演となる。

今回の特徴としては、すべてのギグ(Gig/各パート)が群読で構成されるということだ。
群読といっても朗読劇とかドラマリーディングとはちがう。
これはもう「現代朗読」としかいいようのないもので、げろきょ以外のどの劇団や朗読集団でもやっていないオリジナルな方法だ。
とくに朗読者の身体性を重要視している。
朗読はことばの表現であると同時に、音声表現でもある。
そして音声は身体から発せられる。
身体の状態がどのようなのか、またどのような身体操作をしているかによって、音声のクオリティもまったく変わってくるのだ。
現代朗読ではそこのところを重要視している。

今回の公演でも、朗読者たちの群読による身体運動と音声表現がメインテーマだ。
そしてもうひとつの特徴として、使うテキストはたった2種類(見ようによっては1種類ともいえる)。
A4サイズの紙一枚に収まる短いテキストが公演のためのシナリオだ。
朗読者たちはその紙一枚だけで80分前後の公演を読みきる。
もちろんいろいろな読み方をするのだ。
みなさんが聴いたこともないように、見たこともないような朗読パフォーマンスが次から次へと繰り出されてくることだろう。

コンテンポラリーな表現としてまちがいなく、いまもっとも先端的なことをやっているという自負がある。
しかもそれは小難しいコンテンポラリーではなく、おもしろく楽しい刺激的なものだ。
ぜひおいでいただいて、実際に目撃してもらいたいものだ。
(主宰・演出 水城ゆう)

「キッズ・イン・ザ・ダーク ~ 夏の陣」の詳細はこちら

7月の現代朗読体験講座のお知らせ(7月6日)

現代朗読協会の朗読体験講座、2013年7月のお知らせです。
まったく朗読をやったことがない/ちょっとやってみたいと思っている人や、すでに経験はあるけれど朗読表現に行き詰まりを感じているような方のためにおこなう、ワークショップ形式の体験講座です。

◎日時 2013年7月6日(土)14:00〜17:00
◎場所 現代朗読協会・羽根木の家(京王井の頭線新代田駅徒歩2分)
◎参加費 2,000円

※詳細とお申し込みはこちらから。

◎こんなことをやります
現代朗読というあたらしい表現を理解するために、実際に身体を動かしたり声を出したりして体験していただきます。
毎回、下のようなプログラムからいくつかをピックアップしてご紹介する予定です。

・朗読のための声と身体の準備。
・朗読するときに起こっているさまざまなことの理解。
・朗読のためのテキストの扱い方、読み方と、朗読実践。
・柔軟でとらわれない表現をおこなうためのヒント。

前回の参加者の声を抜粋して紹介します。

◎今まで教わってきたこととは違う方向の考え方を体験でき、もっと知りたいなと思いました。周りに自然があって猫がいて、畳の上で静かだけど静かすぎず落ちつける環境で居心地よく学ばせていただきました。ありがとうございました。

◎ものを読むだけでなく、表現全般に対する意識が少し変わった気がします。呼吸や姿勢など普段の生活にも関わることで大変勉強になりました。また、この家の雰囲気が良く、リラックスできました。

◎目からウロコが落ちた感じです。とても勉強になりました。また遊びに来たいと思います。

◎とてもためになる時間でした。あらためて心と体はつながっているのだとしみじみ思いました。朗読するということは、まさに生きるということそのものだということも感じることができました。ありがとうございました。

◎前に出て朗読をする機会を頂いた際に、とても緊張して文章を読んでいたのですが、先生に体をほぐして頂きながら読んだときは、気持ち良く声を発して読むことができました。これから言葉を読むときは緊張するだけでなく、気持ち良く、楽しく読めたらいいなと思いました。

◎呼吸の大切さを改めて学びました。自分を最大限に表現できるように、日々大切に過ごしていきます。今日はありがとうございました。

「朗読はライブだ!」ワークショップ(2013.6.29)からの抜粋(Podcast on YouTube)

2013年6月29日におこなわれた現代朗読協会の「朗読はライブだ!」ワークショップから、一部音声のみを抜粋してお送りします。
講師は現代朗読協会主宰の水城ゆう。
このワークショップは、最終的に7月27日に明大前〈キッド・アイラック・アート・ホール〉にて最終ライブをおこないます。これは現代朗読協会の公式公演のプログラムの一部となります。

RadioU No.356 YouTubeで配信中。

「朗読はライブだ!」ワークショップ(2013.6.29)からの抜粋(Podcast on YouTube)

2013年6月29日におこなわれた現代朗読協会の「朗読はライブだ!」ワークショップから、一部音声のみを抜粋してお送りします。
講師は現代朗読協会主宰の水城ゆう。
このワークショップは、最終的に7月27日に明大前〈キッド・アイラック・アート・ホール〉にて最終ライブをおこないます。これは現代朗読協会の公式公演のプログラムの一部となります。

RadioU No.356 YouTubeで配信中。

げろきょネットライブ Vol.10 は晩、唐、みぞれ

レポートが遅くなったが、先週の木曜日の夜は「げろきょネットライブ」の10回めだった。
出演は初出演の晩衛、そして常連の山田みぞれと唐ひづるのペア。

晩衛は仕事がIT関連なのだが、サーバーがどうとかいうマニュアルを朗読した。
まったく意味はわからない。
が、おもしろいのだ。
現代朗読としてはおいしい素材だ。
かつて数学者の照井数男が数学の定理を読んだことがあるが、あれに通じるものがあるかもしれない。

山田みぞれと唐ひづるのふたりは、きのこにまつわるテキストをいろいろ集めて、オリジナル構成し、動きもまじえて、しかし即興的に実に楽しく読んだ。

ネットライブでは回線の状態が悪くて、画像が止まったり、品質が落ちたりしてひやひやしたのだが、見直してみると肝心の音声はそこそことれているので、ちょっと安心した。
この模様は、Ustreamのげろきょチャンネルに録画してあるので、当日見逃した方もこちらからご覧いただけます。

げろきょネットライブ Vol.10 は晩、唐、みぞれ

レポートが遅くなったが、先週の木曜日の夜は「げろきょネットライブ」の10回めだった。
出演は初出演の晩衛、そして常連の山田みぞれと唐ひづるのペア。

晩衛は仕事がIT関連なのだが、サーバーがどうとかいうマニュアルを朗読した。
まったく意味はわからない。
が、おもしろいのだ。
現代朗読としてはおいしい素材だ。
かつて数学者の照井数男が数学の定理を読んだことがあるが、あれに通じるものがあるかもしれない。

山田みぞれと唐ひづるのふたりは、きのこにまつわるテキストをいろいろ集めて、オリジナル構成し、動きもまじえて、しかし即興的に実に楽しく読んだ。

ネットライブでは回線の状態が悪くて、画像が止まったり、品質が落ちたりしてひやひやしたのだが、見直してみると肝心の音声はそこそことれているので、ちょっと安心した。
この模様は、Ustreamのげろきょチャンネルに録画してあるので、当日見逃した方もこちらからご覧いただけます。

6月のオーディオブック・リーダー養成講座のお知らせ

オーディオブック制作のアイ文庫では、長く聴き継がれるハイクオリティのオーディオブックの制作と、唯一無二の表現者としての読み手の育成をおこなっています。
日程の都合がつかない方は、個人セッションも受け付けていますので、気軽にお問い合わせください。

主催:アイ文庫
協力:現代朗読協会

★次世代オーディオブック・リーダー養成講座
 声優/ナレーター/朗読者のためのステップアップ講座
 申込みはこちら

【概要】
オーディオブックの読みや収録についてのノウハウとトレーニング法を一日で集中講義します。
その後1〜2か月のトレーニング期間をおいて最終収録実習をおこないます。

【詳細】

(1)集中講座
以下の日程で開催される一日集中講義を受講していただきます。
とても居心地のいい世田谷の築78年の古民家で、一日じっくり学んでいただきます。

◎日時 2013年6月24日(月)10:00〜17:00
◎場所 羽根木の家(世田谷区/京王井の頭線新代田駅からゆっくり歩いて4分)
◎受講料 33,000円

(2)トレーニング

収録用の作品を選び、(1)の内容の習得と(3)にむけての1〜2か月間のトレーニング期間を設けます。
期間中は、メールによる指導と面談(またはスカイプ、希望者のみ)で習得状況をチェックします。質問等も自由です。
理解度や技術レベルによっては現代朗読協会のワークショップに参加していだくこともあります(参加費免除)。

(3)最終収録実習

 アイ文庫のスタジオにて収録実践をおこないます。
 収録後、数日以内に評価結果をご連絡いたします。
 その結果を受けて、

 A) アイ文庫オーディオブックの本収録へと進む
 B) 現代朗読協会での実習を継続(ゼミ生登録)する
 C) 独立して自主制作

 という選択肢をご自分でえらんでいただきます。

【本講座の特徴】
オーディオブックリーダー(朗読者)は、ナレーターでもアナウンサーでもなく、声優でもない、新しい声のジャンルです。
オーディオブックの朗読にチャレンジしてみたいと思っている人が多いなか、その読みや収録についてのノウハウをしっかりとアドバイスしてくれる場所はそう多くありません。
そんななかで、アイ文庫は、今後も長くネットコンテンツとして流通していくに耐えるクオリティを持ったオーディオブックの制作とリーダーの育成にあたっています。
単なる音読コンテンツではなく、「朗読作品」としてのオーディオブックを読める人を育てることが目的です。

文芸朗読、詩曲集、教科書朗読、英語朗読などで業界随一のクオリティと実績を持つアイ文庫のオーディオブック・ディレクターが指導にあたります。
ただ読むだけではない、情報伝達のみにとどまらない、「表現」の域にまで踏みこんだクオリティの高いオーディオブック収録ができるハイレベルなリーダー(朗読者)の育成をめざします。数多くの実践的なノウハウを盛りこんだプログラムで予定しています。

アイ文庫のツイッターも参考にしてください。

「朗読はライブだ!」ワークショップ第14期のお知らせ

話題沸騰中、現代朗読協会のライブワークショップ第14期がスタートします。
朗読というと「ひとりで本を音読する」というイメージが強いのですが、一方で何人もでひとつのテキストを読みライブ作品を作る楽しみもあります。
げろきょのワークショップでは、全6回のワークショップを通じて現代朗読を学びながら、参加者全員でひとつのステージを作りあげ、最終的にライブ公演をおこないます。
会場は明大前〈キッド・アイラック・アート・ホール〉です。

ワークショップは築78年の古民家「羽根木の家」でおこないます。
すべての人が、表現を通じてイキイキと生きること。他人の評価によらず、内なる自分との対話によって立つこと。共演者との共感のなかでひとつの有機体となり、作品を作りあげていくこと。
このワークショップで、まだ見ぬ本当の自分を見つけてください。

◎日時:2013年6月22日、29日、7月6日、13日、20日、27日(最終ライブ)
   (7月27日以外いずれも土曜、10〜13時)
    最終ライブは7月27日昼・夕2回公演
    明大前キッド・アイラック・アート・ホールにて
◎会場 現代朗読協会「羽根木の家」(京王井の頭線新代田駅徒歩2分)
 ⇒ https://www.roudoku.org/aboutus/accessinfo.html
◎参加費:26,000円(全6回+本番+教材費含む)

※詳細・お申込はこちら
 ⇒ https://www.roudoku.org/ws/ws_live.html

※前回公演「キッズ・イン・ザ・ダーク 〜 春の宴」の抜粋映像はこちら